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スタッフ日記

2010年 2月 21日
「さようなら、ジェイソン」

2010年2月8日、早朝、ホッキョクグマのジェイソン(オス)が17歳2ヶ月の生涯を閉じました。

 彼との付き合いは思い起こすに14年余りも前から始まっていました。わずか2歳そこそこの愛くるしい子供のときにイギリスの動物園からここ浜松市動物園へやって来たのでした。当時、すでに飼育していた1歳年上のバフィン(メス)と何のトラブルもない仲睦まじい生活が始まりました。ジェイソンはバフィンのわがままで自由奔放な性格とは好対照な性格でとても素直で落ち着いた良い子でした。

 本年、2世誕生の可能性があり準備万端、期待していましたが残念ながら出産はみられなく私たちもがっかりしていた矢先の1月3日、ジェイソンの部屋にほんの僅かな血の塊がありました。これが始まりだったのかもしれません。「どこかケガでもしたのだろう。元気一杯だし大丈夫だろう。」と余り心配もしていませんでした。

 そして、2週間程過ぎた頃後ろ足の指からの出血がみられたり、なんとなく元気もなくなり、いつもガツガツ食べるえさも残すようになったので薬を飲ませるなどの治療をしたところ食欲も回復してきて一安心していました。ところが、2月2日多量の吐き戻し、下痢がありました。血液検査をしたところ腎臓が悪いことがわかり引き続き懸命な治療しましたが残念ながら腎不全で死亡しました。

朝、「おはよう」と声をかけて獣舎に入って行くと大きなまんまるな黒い瞳で私をじっと見つめて「おはよう」。夕方、「じゃー、おやすみ、またあした」と言って獣舎から出るときも「おやすみ、またあした」と言ってくれたあの瞳。今でも、獣舎に入るとまだあの瞳が見つめてくれる錯覚にとらわれています。運動場で元気一杯動き回っていた姿、プールの中でバフィンとじゃれあっていた姿、美味しそうにおやつのアジを食べていた姿、氷の中のリンゴが食べたくてガリガリかじっていた姿・・・・。最後には必死に立ち上がろうとしても体に力が入らなくて何度も倒れこんでいた姿。何を見ていたのか、うつろになって徐々に輝きを失っていったあの瞳。ただ見守るだけであった私。ほんとうに動けなくなるまで必死に生きようとする(弱さを見せない)野生動物の我慢強さ、物言わぬ彼の訴え、苦しみを理解でなかった悔しさが残っている今現在です。

多くの御来園者の皆様、ジェイソンファンの皆様、花束やお手紙そしてメッセージなどのお心遣い本当にありがとうございました。今後も残されたバフィンにも「元気?」と一声かけてあげてください。


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