飼育員さんのお仕事 ~飼育員さんの一日~
みなさんが浜松市動物園を訪れた時、青い作業着の飼育員さんたちを見かけたことがあると思います。 また、ホームページのブログ「スタッフ日記」でも、楽しい記事を書いてくれています。 飼育員さんは、毎日どんなお仕事をしているのでしょうか。
今回は、今年飼育員になった新人の川崎大輝さんの一日を紹介します!
8:30 出勤
8:40 朝のエサ作り
浜松市動物園では、5つの飼育ゾーンをそれぞれ4~5人の飼育班で担当しています。川崎さんはアジアゾウやライオン・トラの猛獣舎を含む2班のメンバーで、ヤマアラシとマーラの担当です。動物が安心できるよう、基本的に決まった担当者が毎日お世話をします。
動物のエサは、中央調理棟で、「リンゴ3つ、ふかしイモ2つ、菜っ葉2束」など大雑把に分けられ、各飼育ゾーンに運ばれます。その後、各動物の担当飼育員が飼育動物に合った大きさや形に切り分けます。
例えば、アジアゾウはとても体の大きい動物なので、リンゴもふかしイモも大きく切ります。一方、ゴールデンライオンタマリンなど、手のひらに乗るような小さな動物に与える場合は、1cm角ほどに小さく切ります。
また、同じ種類の動物でも、エサの食べ方によって切る形を変える工夫をするんです! 例えば、カナダヤマアラシは手に持って食べるためスティック状に、アフリカタテガミヤマアラシは両手で押さえて食べるため大きめにエサを切ります。
8:50 動物たちを運動場へ移動させる
準備ができたらエサを運動場にセットします。動物たちは運動場で朝の食事をとります。
9:00 動物たちの朝の食事・観察タイム
動物園の動物たちは、1日2食が基本です。
お腹が減ってつらそう…と思うかもしれませんが、動物園にいる飼育動物は、野生動物に比べて運動する量が少ないため、太りすぎないよう1日2食にしています。
そして実は、エサを与えた後も大事。動物たちがどんな様子で、何をどれくらい食べたか/食べ残したかを観察するのです。動物がエサを食べる時のスピードや量は、健康を表す大切なバロメーター。言葉で話すことができない動物たちですから、飼育員は観察によって動物の様子を察知します。
9:00 獣舎のお掃除
運動不足にならないよう、動物の体調が許す限り晴れの日も雨の日も運動場へ。動物たちも室内にいるときよりも、運動場にいるときの方が嬉しそうです!
動物が運動場にいる間、飼育員さんは室内をお掃除します。お掃除は地味なようですが、実は飼育員の仕事のメイン業務です。動物が寝床に使ったワラやフンを片づけ、床をごしごし。動物が病気にならないよう、丁寧に掃除します。また、フンはしっかり観察して、消化の具合でお腹の調子を確認します。
観察した内容は動物ごと・個体ごとに毎日日誌に記録し、万一動物が体調を崩した時に、振り返られるようにします。
12:00 お昼休み
ほっと一息☆
13:00 イベント開催やその準備・お客様に動物の解説・動物のおもちゃ制作・動物のトレーニングなど♪
多種多様な生き物がいることを身近に感じられるのが動物園の特徴ですから、一般のみなさんに動物のことをもっと知ってもらうようにすることも飼育員の大切な仕事。「どうぶつガイド」などのイベント準備や園内に掲示する解説ボード作りでは、どうしたら興味を持ってもらえるか、どう表現したら伝わりやすいかなどを考えて、本物の毛皮や骨を用意したり小道具を作ったりします。
もちろんタイミングが合えば、見学に来たお客さんに直接説明することもあります。さまざまな暮らし方をしている動物がいること、彼らが必死に命をつないでいくことなどから、私たちが学べること・感動することはたくさんあります。
動物の一番の理解者
飼育員の仕事とは、動物を理解すること。これにつきます。
一頭一頭の性格を把握した上で対応することが、飼育の基本です。一見すると全部同じに見えるマーラでも、毎日世話をし観察していると、2-3か月もすれば区別もつくしそれぞれの性格も分かるようになるとのこと! それぞれが嬉しそうだとか、不機嫌だなということも感じ取ります。
そうやって動物と接していると、元気がないことや、食欲がないことなど、いつもと違う様子に早く気付くことができます。
そういった異変に気付いたら、担当者はすぐに班長に報告し、さらに獣医師も交えて対応を考えるなど、動物たちが健康で元気に過ごせるように気をつけています。
動物のトレーニング
アジアゾウのハマコが、飼育員の指示にしたがって脚を上げたり体の向きを変えたりする様子を見かけることがあるかもしれません。
一生懸命なハマコはかわいらしく、指示通りに動くのは見事ですが、実はこれは“芸”ではなく、健康管理のためのトレーニングです。
健康管理のため、動物の体調を把握する目的で採血や足の裏の観察をするのですが、人間にとっては何気ないことでも、動物にとっては怖くて難しいことなのです。このため、毎日のトレーニングで動きに慣れさせています。実際は採血をしなくても耳を触ったり、消毒はしなくても足の裏を出させたりすることで、それが「日常のことだ」とハマコを安心させていきます。
ハマコの健康のためにも、飼育員や獣医師の安全のためにも、毎日地道に繰り返す大事なトレーニングです。
15:00 夕方のエサづくり&動物たちの食事タイム
朝と同じように、夕方のエサを用意します。
動物は運動場にいますので、室内に用意したエサを置いて、運動場から動物が戻るのを待ちます。動物たちはもうお腹ぺこぺこ! このタイミングでは、「早く食べたい!!」と、運動場を駆け回るなどとても活発な動物の様子が見られることがあります。これはかくれた見どころの一つです! 午後に来園されるときには、お勧めです。
猛獣たちの減食日
猛獣などの肉食動物は、野生では狩りをして生活しています。もちろん狩りは毎回成功するわけではないので、毎日十分なエサが食べられるとは限りません。
このように不規則な食生活を送るため、体もその生活に適したつくりになっています。そのため、動物園では健康管理のためにエサの量を減らす「減食日」を設けています。
もし、トムとサナ(ライオン)やテン(アムールトラ)がしょんぼりしていたら、その日は減食しているのかも・・・!
16:00 動物の収容(室内に移動させる)
16:30 運動場の掃除
アジアゾウのハマコの運動場では、フンを回収し、おしっこと小石をホースの水で洗い流しています。特に小石は足裏のケガの大敵です。
小さなケガからでもバイ菌が入って、病気になってしまうこともあるので、掃除は衛生面でも安全面でも大切な仕事です。
17:00 飼育ゾーンで班夕礼
飼育員はそれぞれほとんど専任で担当動物を飼育しているため、班全員が全動物のことを把握する必要はありませんが、交代でお休みを取る前にはしっかり引継をします。
生き物のお世話は、365日お休みはありませんからね!
17:10 全体夕礼
1日お疲れ様でした!
いかがでしたでしょうか?さまざまな動物たちそれぞれに合わせた、細かな気配りが大事なんですね。
最後に、川崎飼育員からのメッセージです。
「飼育員は、動物が生まれてから死ぬまで、動物の一生に携わる仕事です。楽しいことばかりではなく、大変なことやつらいこともたくさんあります。ですが、動物とともに過ごす日々は、他には代えられない面白さがあると思っています。
最後に、私から皆さんにひとつお願いです! 動物園で動物を見るときは、それぞれの動物の前で立ち止まり、『1分間』でいいのでじ~っと様子を見てみてください。きっと、何かしらの動きがあったり、今まで知らなかった動物の一面を発見したりできると思いますよ! それぞれの動物たちが持っているおもしろさを感じて頂けたら嬉しいです。
あ、もちろん聞きたいことがあれば、飼育員までお気軽にお声をかけてくださいね♪」
どうやったら飼育員さんになれるの?
浜松市動物園の飼育員になるには、生物や畜産関係の学校(専門学校や大学など)で勉強した後、「浜松市職員採用試験(畜産分野)/一次試験:筆記、二次試験:面接」を受験します。
ただし飼育員の募集は、毎年あるとは限りません。浜松市動物園だけではなく、どの園も退職者が出た年のみの募集になるため、全国からたくさんの応募があり、倍率はとても高いそうです。